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日本フランス語学会第315回例会

日時: 2017年9月30日(土) 15:00-18:00
会場: 早稲田大学文学学術院 (戸山キャンパス) 33号館16階第10会議室

(1) 小川 彩子 (関西学院大学大学院研究員)

「<強勢形人称代名詞+関係節>型構文についての一考察」

(2) 佐々木 幸太 (関西学院大学非常勤)

「X mettre Y Z 再考: Y と Z が人の場合」

司会: 守田 貴弘 (京都大学)

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(1)小川 彩子「擬似関係節と「言いさし文」―「ノニ節」型を中心に― 」

関係節には一般的に、制限的関係節、同格的関係節、擬似関係節の三種類があるとい
われているが、朝倉(2011)は先行詞が「人称代名詞のように特定のものを表わすときは、
関係節は一般的に同格的」と述べていることから、(1)-(3)の下線部はすべて同格的関係
節であるようにも思える。
(1) Moi qui vous parle, j’ai vu Napoléon une fois, à Chartres. (Zola, E. La Terre)
(2)(Jules Verne の « le Rayon vert »を読んだかと聞かれ)
Je l'ai terminé. Ah oui, je l'ai terminé, et effectivement, moi qui n'aime pas
beaucoup Jules Verne, j'ai trouvé que ce Rayon vert était quelque chose d'assez
extraordinaire. (Le Rayon vert, film d’Eric Rohmer, 1986)
(3)(ポリーヌは慈善活動として、恵まれない子供たちのためにキナワインを作って
いる。ある少女の父親がそのワインを飲んでしまったと聞き)
Moi qui prends la peine de le fabriquer ! disait Pauline.( Zola, E. La joie de vivre)
しかし、関係節が主節の主語の同格として機能している(1), (2)とは異なり、(3)から関
係節を省くと主節がなくなってしまうことから、(3)は同格的関係節ではなく擬似関係
節であると推測される。
また、(1), (2)は統辞的に完全な文であるのに対し、擬似関係節を用いた(3)は統辞的に
は名詞句であり文として不完全である。しかし、内容的には「わざわざ作っているのに」
というようにワンブロックで事態を表現しており「文」としてみなされる。この統辞的
には文として不完全であるという点および内容的には完全な「文」と同等の完結性を有
するという点において、(3)は日本語学でいう「言いさし文」(例として(4)の下線部)と
類似性があるのではないか。
(4) 永尾「(苦笑)-お邪魔します」
リカ「適当に座っちゃって」
永尾、座る-と、テーブルの上に置いてあった作りかけのジクソーパズルを引っ
掛けて、引っ繰り返してしまう。
永尾「あ」
リカ「え、あーっ!」
永尾「悪い-」
リカ「あー、後ちょっとで出来上がりだったのに」
(柴門ふみ『東京ラブストーリー』白川(2009 : 8-9))
本発表では、まず(3)のような<強勢形人称代名詞(以下、「強勢形」とする)+擬似
関係節>は、日本語学でいう「言いさし文」のうちの「ノニ節」型に相当する表現であ
ることを示す。次に、<強勢形+擬似関係節>と<一般的な名詞句+擬似関係節>の比
較対照を行い、後者の表現についても「言いさし文」に相当するケースがあるか否かに
ついて考察を行う。そして最後に、「言いさし文」としての機能を有する<強勢形+擬
似関係節>は、元をたどれば同格的関係節から生じたものであるという仮説を立て、そ
の立証を試みる。
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(2)佐々木 幸太 「X mettre YZ 再考:Y または Z が人の場合」

本発表は,フランス語の開始アスペクトに関する研究の一環である.
mettre の行為主体を X,行為対象を Y,行為後の Y のありかたを Z とする.フランス語では,X が
「Y が Z にあること」(以下,YZ)を実現させることを mettre で表すことがある.
(1) De ma vie je n'aurai mis autant de sucre dans une petite tasse de café.(Bianciotti, H., 1995, le pas si
lent de l'amour : 127)
(2) Le travail n'est pas très prenant : on se lève juste pour aller mettre en marche les machines, on
engrange les données. (Le Monde, 2003 / 08 / 13 : 16)
(1) では砂糖をコーヒーカップに入れることを,(2) では機械を稼働状態にすることを mettre で表し
ている.
mettre の基本的な働きを扱う研究には,Saunier (1996, 1999) がある.Saunier の指摘は示唆に富んで
いるが,曖昧な部分が残っている.たとえば,Y または Z が人の場合,(3)-(5) のように mettre の容認
度が下がることがあるが,Saunier は容認度が変化する仕組みを十分に明らかにしていない.
(3) ? Claude a mis Dominique sur la chaise.
(4) ? Claude a mis Dominique à chanter.
(5) ?? Claude a mis un cadeau à Dominique.
本発表では,まず Saunier の問題点を指摘し,話し手が で何を表すかを発話例の分析
にもとづいて考える.そして,Y が人の場合と Z が人の場合について,mettre の容認度が変化する仕組
みを明らかにする.
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早稲田大学文学学術院 酒井智宏研究室内 日本フランス語学会