お ぼ え が き

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日本フランス語学会2017年度シンポジウム

学会員以外の方のご参加も歓迎です。多数のご参加をお待ちしております。

テーマ:「総称文の対照言語学
     ー英語・スペイン語・フランス語における総称ー」

日時:2017年6月3日(土) 10:00-12:00
会場:東京大学駒場キャンパス 5号館 525教室
キャンパスまでのアクセスは以下のアドレスをご覧下さい。
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map02_02_j.html

申し込み:不要(直接会場にお越し下さい)
参加費:無料

パネリスト:
岩部浩三(山口大学、英語学)
二宮哲(獨協大学、スペイン語学)
東郷雄二(京都大学名誉教授、フランス語学)
企画:武本雅嗣、司会:小田涼

プログラム:
10時~10時30分:岩部浩三「総称文の多様性と認知能力の複合性仮説」
10時30分~11時:二宮哲「総称文と談話条件」
11時~11時30分:東郷雄二「総称の意味はどこから生まれるのか」
11時30分~12時:ディスカッション(パネリスト+フロア)

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「総称文の多様性と認知能力の複合性仮説」 岩部 浩三(山口大学)

 近年,Leslie (2007, 2008)によって、総称文研究が新しい展開を見せている。彼女は子供が量化詞を身につける前に総称文を使えるようになることから,総称文は人間が生まれながらに持つデフォルト的認知能力を反映した表現であると主張している。デフォルト的認知能力は身の危険を避けることと密接に結びついており,例えばSharks attack bathers(サメは海水浴客を襲う)のようにごく少数の実例しかないのに受け入れられるStriking Genericに典型的な例が見られる。一方で,この能力が人間に対して適用された場合,Muslims are terrorists(イスラム教徒はテロリストだ)のように社会的偏見に結びつく危険性も孕んでいる。
 本発表では,英語総称文には3つの形式があり,それらが使い分けられていることに注目する。総称文すべてがデフォルト的認知能力を反映するのではなく,それに対応するのは無冠詞複数形だけであり,不定単数形はむしろ大人の認知能力を反映した形式であると仮定する。そうすれば,不定単数形のStriking Genericが不自然であること,不定単数形総称文が量化を伴うこと,どの言語にも総称文の形式が複数あるらしいこと,デフォルト的認知能力に伴う社会的偏見を克服できる可能性があること,等の課題に解決の見通しが得られることを論じる。
 以上のような考察を踏まえて,フランス語やスペイン語との比較,さらには冠詞も単複の区別もない日本語総称文における使い分けの可能性等をディスカッションできればと考えている。


「総称文と談話条件」 二宮 哲 (獨協大学)

 他の多くの言語と同様、スペイン語にも総称文に特化した文や名詞句の形態はない。では総称文とはどのような条件下で成立するのか。本発表では、話し手と聞き手を中心とした談話条件を軸に総称文を成立させる環境について考察する。
 まず、主語名詞句の形態に即したスペイン語総称文の現れ方を観察する。基準として、話し手と聞き手が総称文に現れる主語名詞句をどのように捉えるのかを利用する。総称文中の定冠詞単数・複数、不定冠詞単数を伴った主語名詞句は談話テクスト内の要素や発話の場に存在する対象を指示する表現ではないことから、話者の「(百科事典的)知識」の内部を検索していることが確認できる。
 本発表では、定冠詞単数・複数、不定冠詞単数を伴った主語名詞句の全ての形態における共通の談話条件である「総称文中の名詞句がテクスト内や発話の場に指示対象を持たないこと」に注目する。これにより、総称文中の主語名詞句がテクスト内の語句と語彙的・意味的結束関係(Halliday and Hasan 1976)がある場合(談話としての文法的一貫性がある場合)に、指示的結束関係を捨てることで総称性が現れると考えることができる。このことは、多くの言語に共通した総称文の出現する談話条件であると考えられる。


「総称の意味はどこから生まれるのか」 東郷雄二

 総称文という特別の構文を持つ言語はおそらくない。総称文はごく普通の文型である。したがって総称の問題は、構文(統語論)の問題ではなく、意味解釈の問題である。総称の意味がどこから、どのような経路をたどって生まれるのかを問わなくてはならない。
 総称研究に一時期を画したCarlson, N. et al. (eds) The Generic Book, 1995以来、総称を隠れた量化子GENによって分析するのが主流になった。しかし近年になって量化によらない分析を主張する研究が目に付くようになってきた。
 フランス語には次のような総称文のタイプがある。
 a)[不定冠詞単数]Un carre a quatre cotes. 正方形には辺が4つある。
 b)[定冠詞単数]Le vin est meilleur que la biere. ワインはビールよりおいしい。
 c)[定冠詞複数]Les lions vivent en Afrique. ライオンはアフリカに生息している。
若干マージナルながら次のタイプもある。
 d)[不定冠詞複数]Des lions blesses sont vulnerables. 手傷を負ったライオンは攻撃に弱い。
 e)[指示形容詞複数]Ah, ces experts ! ああ、あの専門家って奴は。
 このシンポジウムでは次のことを検討してみたい。
(I) 上のa) にのみ隠れた量化子GENによる量化分析を支持する。ただし個体量化ではなく、状況量化によって総称の意味を得る。
(II) 上のb) に量化は関係しない。le vinは、発話状況・言語文脈との紐帯の欠如により、共有知識に存在する個体としての類 (a kind as an individual) を指す。これは定冠詞の通常の働きである。
(III) 上のc)も量化ではない。les lionsは共有知識に登録された個体の最大集合 (sum of individuals)を指す。

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日本フランス語フランス文学会春季大会のプログラムは次のページにあります。
http://www.sjllf.org/taikai/?action=common_download_main&upload_id=1213

お知らせは以上です。

日本フランス語学会シンポジウム企画委員 小田涼・武本雅嗣