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日本フランス語学会第313回例会

日時: 2017年5月13日(土) 15:00-18:00
会場: 早稲田大学文学学術院 (戸山キャンパス) 33号館16階第10会議室

(1) 新田 直穂彦 (東北大学大学院修了)

「副詞inversementの機能について」

(2) 曽我 祐典 (元関西学院大学)

「間一髪の事態を表す <副詞句+主節>」

司会: 酒井 智宏 (早稲田大学)

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(1) 新田 直穂彦 (東北大学大学院修了)「副詞inversementの機能について」

 副詞 inversement の用法を位置逆転, 意味逆転という 2 つに分けて, 各用法の機能につ いて考察し, 日本語の副詞「逆に」との違いを明らかにすることを目的とする. 芦野(2005) に則り, inversement の左側の命題を P, 右側の命題を Q, P の参加項を a, b, 参加項の関係 をrとすると, 位置逆転の機能はPのrを保ちつつPのa, bを入れ替えたQを導くこと だと言える. P, Q の a, b, r はそれぞれ意味的に等価であればよい. また, a, b の間で利益の やりとりがあれば, r が等価でなくても inversement は使用できる. 意味逆転の機能は, P のレーマと反対の意味を持つレーマを含む Q を導くことである. Q のレーマが P のそれ と正反対である必要はなく, inversement は比較的自由に使用できる. しかし, Q が P から 予想されるのとは反対の事態である場合は使用できない.
 日本語では「逆に」が inversement に対応するが, 両者には機能に明確な違いがある. inversement と異なり「逆に」は, 単独で方向や順序などが反対であることを表し, 予想と 反対の事態を示す Q を導くことができる. また, P と正反対の関係にある Q を要求するた め, P の r を保ったまま a, b を入れ替えると不自然になり, 利益のやりとりがあるような 相互関係とも相性が悪い.


(2) 曽我 祐典 (元関西学院大学)「間一髪の事態を表す <副詞句+主節>」

 本発表で取り上げるのは,過去においてもう少しで現実になるところだった 事態(間一髪の事態)を表す <副詞句+主節> の発話である。これまで文法書や 論考があつかってきたのは (1), (2) のように半過去形を用いる場合のみのようだが,実は (3), (4) のように大過去形を用いることもある。

(1) Une minute plus tard, le train .
(2) Mais tu es fou de m'avoir bouscule ainsi ! Un peu plus, je .
(3) Dix secondes de plus, l'avion la frontière.
(4) Le vent soufflait, c'était terrible. Les tuiles volaient partout. C'était la tempête. Un peu plus fort, j' ma maison.

 (1), (2) のような半過去形の発話については部分照応説にもとづく Berthonneau & Kleiber (2003, 2006) や未完了性を説明の鍵とする渡邊(2007, 2014) など優れた論考があるが,それらとは異なる立場から,(1)-(4) のような発話が (5) のような操作の産物であることを示したい。

(5) a. 発話者は,過去のなんらかの事態 S を踏まえている。S のある過去スペ ースにいる気持ちになり,S に対してわずかな差異 D のある反実の事態 P を思い描いて,D を副詞句で表すことによって喚起する。
b. そして,P のある反実 P スペースにいる気持になり,そこに条件 P の帰 結として確かにある事態として Q を思い描いて主節によって表す(事行 の非完了/完了に応じて 半過去形/大過去形を用いる)。

 この (5) から,帰結 Q の反実性は反実 P スペースにある事態であることに由来し,切迫感は条件 P が S に対してわずかな差異 D しかなく,Q のモダリティ が「確定」であることに由来すると説明できることになる。

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