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日本フランス語学会第309回例会

日時 : 2016年10月15日(土) 15:00-18:00
会場 : 早稲田大学文学学術院 (戸山キャンパス) 31号館103教室
[※いつもの建物と異なりますのでご注意ください。]

(1) 谷川 恵 (東京大学大学院)

「フランス語名詞句における等位接続構造」

(2) 津田 洋子 (京都大学研修員)

「現象描写文と発話の場―(IL Y A)「名詞句+関係節」の分析を中心に―」

司会: 酒井 智宏 (早稲田大学)

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(1) 谷川 恵 (東京大学大学院)「フランス語名詞句における等位接続構造」

 本発表では、フランス語名詞句内における等位接続構造のうち、特に名詞の等位接続および限定詞の等位接続を扱う。
 限定詞と名詞は性・数の一致を行うため、(1)のように限定詞複数形に複数名詞が後続する構造は適格である。他方で、等位接続された単数名詞を用いた容認度テストの結果、限定詞複数形に等位接続された単数名詞が後続する(2)は容認度が低い。

(1) Mes parents sont gentils. 「私の両親は優しい。」
(2) ?*Mes père et mère sont gentils.  (意図した意味)「私の父と母は優しい」

また、限定詞が単数形のとき、(3)のように限定詞単数形に単数名詞ひとつが後続する構造は適格である。

(3)Mon père est gentil. 「私の父は優しい」

その一方で、限定詞単数形に等位接続された単数名詞が後続する文(4),(5)は非文となる。

(4) *Mon père et mère sont gentils. (意図した意味)「私の父と母は優しい」
(5) *Mon père et mère est gentil. (意図した意味)「私の父と母は優しい」

 これらのことから、本発表では、(i)限定詞複数形は、単独の複数名詞と等位接続された単数名詞を区別すること、(ii)限定詞単数形は、単独の単数名詞と等位接続された単数名詞を区別することを主張する。
 また、限定詞を等位接続詞ouを用いて等位接続した構造についても扱い、名詞句における等位接続構造と限定詞の機能について検討する。

(2) 津田 洋子 (京都大学研修員)「現象描写文と発話の場―(IL Y A)「名詞句+関係節」の分析を中心に―」

 フランス語には、統語的には「名詞句+関係節」でありながら、たった今話し手の目の前で起こった事態を表す、現象描写文と呼ばれる文タイプがある(1)。この文タイプは、(2)のような通常の「主語+述語」で表される文タイプと異なり主動詞を持たない。そのため、文としての成立をめぐって様々な議論がなされている。

(1) Le facteur qui passe !
(2) Le facteur passe.

まず、Grégoire(1949)において、この文タイプは« un type de phrase méconnu »として、日常的な話し言葉で用いられるにもかかわらず、文としての研究がされてこなかった事実が指摘される。そして、(1)の文タイプは、(3)のような提示詞を伴う表現の省略形ではなく、大変便利な一つの文タイプを選択肢として提供していると主張される。

(3) {C’est / Il y a / Voilà}le facteur qui passe !

この論文をうけ、Pottier(1949)においても、(1)の文タイプは自然発生的な文として捉えるべきとしたうえで、(1)を知覚の反応に関わる主観的な文、(2)を客観的な文として区別する必要性が指摘される。そして、(1)の文タイプにおいて含意される知覚動詞 « Je vois »などの代わりに、{C’est / Il y a / Voilà}のような « formules passe-partout »(用途の広い表現)を用いて、(3)のように構文としての形式が整えられるとされる。
 その後(1)のような文タイプは、(3)のような提示詞を含む文タイプや、主動詞として知覚に関わる動詞を含む文タイプとの関係をもとに様々な考察が行われてきた(Rothenberg 1971, 1972, 1979 ; Radford 1975 ; Cadiot 1976 ; Kleiber 1981, 1988 ; Muller 1995, 2001 ; Furukawa 1996, 2005, 2013)。
 本発表においては、{C’est / Il y a / Voilà}「名詞句+関係節」の文脈との共起関係をもとに、どのような文脈において「名詞句+関係節」が文として成立しているかを吟味する。そのうえで、「名詞句+関係節」が、どのように不足している要素を補填し文として成立するかを説明する。
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