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日本フランス語学会第308回例会

日時: 2016年9月24日(土) 15:00-18:00
会場: 早稲田大学文学学術院 (戸山キャンパス) 33号館16階第10会議室

(1) 白石 碧 (パリ第7大学大学院)

「フランス語の右節点繰り上げ構文における動詞のミスマッチ」

(2) 谷口 永里子 (京都大学大学院)

「主節と関係節における倒置と焦点」

司会: 守田 貴弘 (東洋大学)
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(1) 白石 碧 (パリ第7大学大学院)「フランス語の右節点繰り上げ構文における動詞のミスマッチ」

右節点繰り上げ構文は、省略箇所と先行詞の間に他の省略構文よりも厳しい同一性条件(音の同一性)が必要であるとされている。

(1) a. Certaines agences ont déjà fermé leurs portes ou vont bientôt fermer leurs portes. (Le Monde French Treebank)
  b. * Certaines agences ont déjà ouvert leurs portes ou vont bientôt ouvrir leurs portes.

Pullum & Zwicky (1986)によると、右節点繰り上げ構文はfactorable coordinationであり、factorable coordinationが可能であるのは、各等位項の要求が同じまたはミスマッチがsyncretism (同形) によって解消される場合である。
 しかし, フランス語の右節点繰上げ構文には、(2)のように、音の同一性を持たない動詞のミスマッチが見られることがある。

(2) La Confédération Paysanne a répertorié une trentaine de site de production à grande échelle qui ont vu le jour, ou qui vont voir le jour en France. (France Inter-2015/02/20)

コーパス調査と容認度のテストの結果は、音の同一性がフランス語の右節点繰上げ構文において重要ではないことを示す。
動詞のミスマッチの分析として、以下のように提案する。
(i) 各等位項の対立する要求は最終項の要求によって解消される。
(ii) 同一の語彙素を持つ要素を削除することができる。


(2) 谷口 永里子 (京都大学大学院)「主節と関係節における倒置と焦点」

本発表では、(1)~(3)のような主節と関係節の中の倒置の現象について、倒置主語が焦点を担うか、という問題を中心として検討する。(1)のタイプを「指示型倒置」、(2)のタイプを「提示型倒置」と呼ぶ。先行研究では特に提示型倒置と従属節の中の倒置主語が焦点を担うか、意見が分かれている。

(1) Sont reçus Marie et Pierre.  (Marandin, 2011)
(2) Alors, entra un soldat. (ibid.)
(3) le livre qu’a acheté Paul (ibid.)

(1)の指示型倒置は、談話の場に根差した前提(開放命題)が存在し、倒置主語がidentificational focusを担う。また、限定表現ne…queとseulement、対比表現を付加する焦点テストを行った結果、(2)のような主節の提示型倒置の倒置主語はinformation focusを担うことが明らかになった。さらに、関係節中の倒置は倒置主語が節末を占める場合は倒置主語がinformation focusを担うが、間接目的語や状況補語などが後続するときは焦点を担わない傾向がある。関係節中の倒置主語が担う焦点は、指示型倒置や主節の提示型倒置の倒置主語が担う焦点より弱いものであることを示唆する。

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