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日本フランス語学会第307回例会

日時: 2016年6月18日(土) 15:00-18:00
会場: 早稲田大学文学学術院 (戸山キャンパス) 33号館16階第10会議室

(1) 新田 直穂彦 (東北大学大学院)

「副詞句から接続詞句へ: en même tempsの場合」

(2) 佐々木 幸太 (関西学院大学非常勤講師)

「mettre の制約に関する一考察」

司会: 酒井 智宏 (早稲田大学)

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(1) 新田 直穂彦 (東北大学大学院)「副詞句から接続詞句へ: en même tempsの場合」

同時性を表すen même temps は一般に副詞句として機能するが、文頭に置かれた場合は、前後の文を結合する接続詞句のような働きをする。本発表では、コーパスの分析に
基づいて、en même temps の副詞句から接続詞句への変化について考察した。
コーパス(Frantext)によれば、en même temps は17 世紀初頭から使用され始めた。文頭で用いられる割合は、17 世紀から19 世紀後半まで上昇し、それ以降は徐々に低下している。文中では接続詞句の機能を果たすことがないため、接続詞句としての使用頻度も低下していることになる。とはいえ、副詞句から接続詞句への変化は進行している。
Overbeke(2007)が主張したように、文頭に置かれた場合、文中で用いられた場合と比較すると、同時性という意味が希薄化して対立を表すことが多くなる。ただし、コーパス
(Le Monde diplomatique)の分析結果では、対立を表す頻度よりも、話題の変更や、対立していない内容の添加を表す頻度の方が高いことが確認された。同時性と対立とは近い関
係にあり、cependant, alors que の場合は、同時性から対立の意味が生じた。これに対して、en même temps の場合は、同時性から対立以外の意味が生じており、同時性を表す副詞句から多義性を持つ接続詞句への変化が起きていると考えられる。

(2) 佐々木 幸太 (関西学院大学非常勤)「mettre の制約に関する一考察」

 本発表では,開始アスペクトマーカー se mettre à Inf. の核となる mettre がどのような特性をもった動詞であるかを解明するために,行為の「対象 Y」または「Y の新しい位置・状態 Z」が人の場合の mettre の使用にかかわる制約を論じる.とくに注目するのは,(1), (2) のような発話とちがって (3)-(5) のような発話(Y または Z が人)がときに容認度が低いという事実である.

(1) C'est ainsi que le matin, quand Georgette rentre, il met son café au lait dans sa soupe pour savoir quel goût aurait ce mélange. (Soupault, P., 1928, Les Dernières nuits de Paris : 60)
(2) Après avoir mis en marche la cafetière, j'ai pris un bain dans une baignoire pleine. (Hassen, B., 2015, Pauvre Martin, pauvre misère : 34)
(3) ?Claude a mis Camille à faire la cuisine / à laver la vaisselle. (Saunier, 1996 : 63)
(4) a. Je vais te mettre à décharger la camionnette moi, tiens, tu vas voir si tu vas rigoler. b. " tu ne veux tout de même pas dire qu'une femme qu'ils la mettent à faire de la soudure? (ibid. : 64)
(5) Claude a mis {trois heures de colle à Dominique / * trois heures de congés à Dominique}. (ibid. : 81)

この事実に言及した Saunier (1996) は,(3), (4) について,行為主体 X と対象 Y が敵対している文脈や論争的な対話場面では mettre が容認されると述べている.しかし,その理由は明らかにしていない.また,(5) は Y が Z にとって望ましい場合は容認度 が低いとしている.しかし,実例を見るとそのような場合でも,mettre が容認される場合があることが分かる.本発表では,言語実態の観察にもとづいて,Y または Z が人の場合に,mettre の容認度が下がる要因を明らかにしたい.

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早稲田大学文学学術院 酒井智宏研究室内 日本フランス語学会