お ぼ え が き

まえの記事 つぎの記事
日本フランス語学会第301回例会

日時: 2015年9月26日(土) 15:00-18:00
会場: 早稲田大学文学学術院 (戸山キャンパス) 33号館16階第10会議室

(1) 長沼 剛史 (京都大学大学院)

「指示形容詞句の総称解釈をめぐって」

(2) 近藤 野里 (名古屋外国語大学)

「フランス語の長母音と位置の法則」

司会: 守田 貴弘 (東洋大学)
—————————————————————————————————————————
(1) 長沼 剛史 (京都大学大学院)「指示形容詞句の総称解釈をめぐって」

 従来の研究においては、総称文の主語名詞句は定名詞句 le N / les N、不定名詞句 un N(稀に des N)であるとみなされてきたが、指示形容詞句ces N / ce Nにも限定的に総称解釈がみられる(以下、指示形容詞総称と表記)。指示形容詞総称には4つの下位分類があり、1)照応的用法、(2)ステレオタイプ的用法、(3) 周知の指示形容詞、(4)新聞・雑誌タイトルに分類できる。

(1) A: Mon camarade de classe vient d’acheter un labrador. B: Ah, ces labradors sont d’excellents compagnons.
(2) [イタリア人がナンパしているのを見て]Ah, ces Italiens !
(3) C’était une femme longue, sèche, vigoureuse, une de ces femmes blondes qui pourraient aussi bien être brunes. (SAGAN, La Chamade)
(4) Ces Français qui consomment trop de médicaments (春木 2012)

4つの下位分類のうち、本発表では照応的用法とステレオタイプ的用法について考察する。照応的用法とステレオタイプ的用法については、BOWDLE & WARD (1995)や GARY-PRIEUR(1998, 2001)が分析しているが制約を示すに留まっており、説明が不充分である。
 本発表では、東郷(1999, 2000, 2009)の談話モデルを援用し、照応的用法と ステレオタイプ的用法を分析することを試みる。照応的用法・ステレオタイプ的用法は共有知識領域の下位領域であるエピソード記憶領域を参照するサブクラス指示であることを示す。

(2) 近藤 野里 (名古屋外国語大学)「フランス語の長母音と位置の法則」

 中舌母音の分布について、20世紀の音声学者たち(Fouché 1935, Delattre 1951, Straka 1981)によって「位置の法則(loi de position)」が指摘されている。この法則は、母音を含む音節が開音節(母音で終わる音節)、もしくは閉音節(子音で終わる音節)であるかによって、開口度の異なる2つの母音が相補分布を形成するものである。つまり、開音節では[e, ø, o]の狭母音が、閉音節では[ε, œ, ɔ]の広母音が現れる。ただし、位置の法則には例外も見られる。例えば、語末閉音節における狭母音[ø] (jeûne [ʒøn])および[o] (paume [pom])の発音については、少なくとも19世紀末までは長母音の発音が規範的であったもの(i.e. [ʒø:n], [po:m])である。また語末開音節における狭母音[e]と広母音[ɛ]の対立もその例外に当たる。最近の音韻研究(Rizzolo 2002, Féry 2003)では、狭母音([e], [o], [ø])は潜在的に長いため開音節に、広母音([ε], [ɔ], [œ])は短いために閉音節に分布するという仮説を立てることで、位置の法則に従う分布を音節の種類の問題としてではなく、むしろ長さの問題として扱うものがある。本発表では、中舌母音の分布と長母音消失の通時的変化を追うことで、この「位置の法則」について再考察を行う。

—————————————————————————————————————————
*早稲田大学文学学術院 (戸山キャンパス) へのアクセス
http://flas.waseda.jp/flas/access/
*学会ホームページ
http://www.sjlf.org/