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日本フランス語学会第289回例会

2013年11月9日(土) 15:00-18:00
会場: 跡見学園女子大学文京キャンパス2号館7階 M2707教室
(東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅下車 徒歩2分、東京メトロ有楽町線 護国寺駅下車 徒歩8分)

(1) 津田 洋子 (京都大学大学院)
「〈voilà+名詞句+関係節〉 構文をめぐって―先行場面とスキーマ化されたシナリオ―」

(2) 春木 仁孝 (大阪大学)
「大過去の前景化効果について―時間的先行性を表わさない大過去―」

司会: 守田 貴弘 (東洋大学)

*跡見学園女子大学へのアクセス (文京キャンパスでの開催となりますので十分ご注意ください。)
http://www.atomi.ac.jp/univ/about/campus/access.html
*学会ホームページ
http://www.sjlf.org/
*日本フランス語学会事務局
〒150-8366 東京都渋谷区渋谷4-4-25
青山学院大学フランス文学科合同研究室内



1. 津田 洋子 (京都大学大学院)「〈voilà+名詞句+関係節〉 構文をめぐって―先行場面とスキーマ化されたシナリオ―」

〈voilà+名詞句+関係節〉構文には、話し手の目の前で起こった出来事に聞き手の注意を向けさせようとする(1)のようなタイプの文がある。

(1) a. C’est bien. Ah, voilà le feu qui flambe.
b. Arrête, mais arrête ! ça y est ! voilà mes plaques qui recommencent !

この文タイプは、「発話状況への注意喚起(Rothenberg 1971)」、「聞き手に直接知覚可能(Lambrecht 2000)」など、直示性の観点から説明されることが多かった。一方、voilàは空間的直示機能だけでなくアスペクトマーカーとしての機能を持つことも指摘されてきた(Lafontaine 1989, Léard 1992)。これらの先行研究をふまえ、津田(2013)では、il y a 構文との比較から、話し手の目の前で起こった同じ出来事を表現しながらも、voilà構文には先行場面が存在するという仮説を提示した。
 本発表では、この先行場面との関係性にもとづく、話し手の目の前で起こった出来事の予測可能性について考察する。そして、出来事を表わす〈voilà+名詞句+関係節〉構文が定名詞句と共起しやすいことを示した上で、定名詞句の場合には、時系列上にスキーマ化された出来事のシナリオの存在により、先行場面から予測可能な出来事を表わすことを説明する。
 また、〈voilà que 節〉との対比においては、出来事の中核的参与者である名詞句の指示対象が出来事の予測に組み込まれているかどうかが、両構文の意味の違いとなることを説明する。



2. 春木 仁孝 (大阪大学)「大過去の前景化効果について―時間的先行性を表わさない大過去―」

 大過去は教科書的には「過去における過去」を表わすと言われるが、小説などの語りにおいては時間的先行性を表わさず、当該文脈で自らに先行する半過去、単純過去、複合過去などが表わす事態に対して継起的な事態を表わしている場合がある。半過去に関しては過去全体をカバーできる時制であるところから、大過去が表わす事態よりも以前の未完了的な事態を表わすことがあることは知られているが、物語的半過去や単純過去に対して継起的な事態を表わす大過去が存在することはこれまで論じられることはなかった。本発表では中村芳久氏が提唱する認知モードの観点を導入して、Iモード的な語りの文脈において時間的に先行する事態を表わしていない大過去は、前景的な事態を表わすために用いられていることを示す。Iモード的な語りは、通常の半過去の使用や物語的半過去の使用などによって構成されるが、本発表で問題にするような大過去そのものの使用がIモード的語りの開始となることもある。また、自由間接話法(または自由直接話法)的な語りによって構成されることもある。
 発表では大過去以外の時制に関しても、Iモード的(そしてDモード的)な語りとの関係についても多少とも言及する予定である。