お ぼ え が き

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まともに研究するつもりはないが、いまさらながら、基礎知識だけでもしいれておこうと思い、以下に枚挙するようなカルタゴの歴史にかんする入門書をあつめてよんでいる。
現在入手可能な文庫版だけでもこんなにそろうとは、意外に人気のある分野なのだとおどろく。

塩野七生 (2002)『ローマ人の物語 (3) ― ハンニバル戦記(上)』新潮文庫 [非文庫版初版刊行 1993年]
塩野七生 (2002)『ローマ人の物語 (4) ― ハンニバル戦記(中)』新潮文庫 [同 1993年]
塩野七生 (2002)『ローマ人の物語 (5) ― ハンニバル戦記(下)』新潮文庫 [同 1993年]
  ⇒人気作家だけあってよませる。「帝王学」とやらを知りたがる『プレジデント』読者層のおやぢ専用のよみものだろうとおもっていた偏見をすこし後悔した。政治的にも軍事的にもきわめて詳細で、地図も多いのでわかりやすい。ただし視点はローマがわ (そういうシリーズだからしかたがないけれど)。

塚原富衛 (2001)『ローマ・カルタゴ百年戦争』学研M文庫 [同 1944年]
  ⇒文庫本はハンニバルをえがいた漫画のような表紙だが、じつは初版は1944年と群を抜いて古い。戦争中に出版されたせいか、カルタゴの平和主義を「頽廃せる文化人」の「壊疽症状」とけなし、ローマの軍国主義を「剛毅精悍」と称讃するなど、好戦性が鼻につく。

服部伸六 (1987) 『カルタゴ―消えた商人の帝国』現代教養文庫 [文庫書きおろし]
  ⇒他ではよめない情報がふくまれており、1冊でなるべく多くの情報を得ようとするならもっともよい。フェニキア以前の「シドンびと」からときおこし、歴史のみならず文化の基層にまでせまろうとする。

松谷健二 (2002)『カルタゴ興亡史』中公文庫Biblio [非文庫版初版刊行 1991年]
  ⇒ (おわりちかくのにわかな悲愴さをべつにすれば) 冷静、公平でありながら、味わいのある文章。

森本哲郎 (1993)『ある通商国家の興亡―カルタゴの遺書』PHP文庫 [同 1989年]
  ⇒ジャーナリスト出身だけあってよませる。が、やや図式的にすぎる。カルタゴ対ローマを、海の民対陸の民、商業国家対政治軍事国家であるとする。また、カルタゴのありかたを日本にかさね、かつカルタゴの滅亡を現代日本への警告であるとする。

マドレーヌ・ウルス=ミエダン(1996)『カルタゴ』クセジュ文庫 [原著 Madeleine HOURS-MIEDAN, Carthage, P.U.F., Coll. Que sais-je ?, n°340, 初版1964]
  ⇒みじかい章・節をつみかさねた、簡潔で綜合的な入門。はぶかれがちなカルタゴ滅亡以降にもふれる。訳者あとがきは森本哲郎的。

ベルナール・コンベ=ファルヌー(1999)『ポエニ戦争』クセジュ文庫 [原著 Bernard COMBET-FARNOUX, Les Guerres Puniques, P.U.F., Coll. Que sais-je ?, n°888, 初版1967]  
  ⇒入手済み、未読。

カルタゴとローマの1世紀におよぶ戦争を「ポエニ戦争」とよぶのは、ローマがわからみた一方的な呼称であって、人類史的に不適切だとする指摘がある(ウルス=ミエダン)。
しかしながら、「ポエニ」という語形じたいは、じつはカルタゴ人がその出自としてほこりにしていた「フェニキア」と同語源。ギリシア語でいう「ポイーニクス Φοινιξ」からきている。





♯追補 (入手困難なもの)

楠田直樹 (1997)『カルタゴ史研究序説』 青山社
長谷川博隆 (2000) 『カルタゴ人の世界』講談社学術文庫Biblio [非文庫版初版刊行 1991年]
アズディンヌ・ベシャウシュ著、藤崎京子訳 (1994)『カルタゴの興亡―甦る地中海国家』創元社
アラン・ロイド著、木本彰子訳 (1992)『カルタゴ』 河出書房





Salammbô


♯『サランボー』もわすれてはいけない。




♯Amazon リストマニア 「カルターゴー」
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ちなみに、「カルターゴー」という母音の長短は、ラテン語 Carthāgō に忠実だが、当のカルタゴがわからみれば敵の言語の特徴を帯びているだけではないか?