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日本フランス語学会第286回例会

日時: 2013年6月22日(土) 15:00-18:00
会場: 跡見学園女子大学 文京キャンパス 2号館7階 M2707 教室
(東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅下車 徒歩2分、東京メトロ有楽町線 護国寺駅下車 徒歩8分)

(1) 谷川 恵 (東京大学大学院)「フランス語における付加形容詞の分布について」

(2) 佐々木 幸太 (関西学院大学大学院)「se mettre à Inf.再考―先行研究の検討と仮説の提案―」

司会: 守田 貴弘 (東洋大学)

*跡見学園女子大学へのアクセス (文京キャンパスでの開催となりますので十分ご注意ください。)
http://www.atomi.ac.jp/daigaku/institution/access.html
*学会ホームページ
http://www.sjlf.org/
*日本フランス語学会事務局
〒150-8366 東京都渋谷区渋谷4-4-25
青山学院大学フランス文学科合同研究室内



(1) 谷川 恵 (東京大学大学院)「フランス語における付加形容詞の分布について」

本発表では、フランス語における付加形容詞の分布について、主に統語的な観点から検討し、特に、Bally (1965)等で関係形容詞(adjectif de relation)と呼ばれてきた用法(以下、関係用法と呼ぶ)において、形容詞が他の用法とは異なる統語上の位置に現れることを主張する。
 関係用法の場合、形容詞は、以下の特徴をもつ。(i)文中の属詞の位置に生起できない。(ii)程度副詞による修飾を受けることができない。(iii)必ず名詞に後置されなければならない。関係用法には、固有名詞から派生した形容詞の用法(e.g. français, parisien, nixonien)のほか、学問・産業・身体部位などの名称を表す場合(e.g. médical, agricole, cérébral)などが該当する。
 従来、名詞に後置される形容詞に分類されてきた形容詞には関係用法、非関係用法という2種類の用法があり、用法によって統語的に異なる位置を占めることを検証する。複数の意味を持つ形容詞を用いた文法テストを行い、(i)非関係用法の形容詞は、先行研究において観察されてきたのと同様、名詞と名詞の補部から成る構成素の外側に現れるのに対し、(ii)関係用法の形容詞は、名詞とその補部の間に現れることが可能であることを示す。
 最後に、同じ位置に生起する形容詞に共通する統語・意味の傾向について検討する。



(2) 佐々木 幸太 (関西学院大学大学院)「se mettre à Inf.再考―先行研究の検討と仮説の提案―」

本発表では,日本語の「Vハジメル」,「Vダス」,「Vテクル」と,フランス語のcommencer à/de Inf.,se mettre à Inf.に関する研究の一環 として,se mettre à Inf.の特性を明らかにすることを目指す.
 動詞mettreで表す行為の主体をX,対象をY,行為後のYのありかたをZとすると,XがYをZに移行させることを次のように表すことがある.
 (1) La clef qui trainait par terre? Je l'ai mise sur ton bureau.
 Zは,(1)では空間的なありかただが,次のように観念的なありかたのこともある.
 (2) Il ne faut jamais mettre son chat en colere.
 (3) « Tu joues à la poupée? » elle m'a demandé Louisette, et puis elle s'est mise à rire. (Goscinny, R. 1960, Le Petit Nicolas)
 Zは,(2)では「怒っている状態」であり,(3)では「笑う状態」である.(3)のように,「ある行為をする状態」の場合は,à Inf.で表す.
 Franckel (1996) をうけて,Saunier (1999:280) ではse mettre à Inf.を用いると次のような表現効果が生じると指摘している:
 A)soudainete:Zは,突発的に開始する行為である;
 B)incongruite:Zは,異常な行為(または好ましくない行為)である;
 C) « pour de bon »:Zは,ようやく開始する行為である.
 Saunierは,特にZを突発的な行為や場違いな行為として述べる場合に,se mettre à Inf.を用いやすくなると指摘している.一方,C)に関しては詳しい記述がなされていない.また,A)〜C)のような表現効果がなぜ生じるのかは,十分に説明していない.
 本発表では,se mettre à Inf.を用いる場合にA)~C)の表現効果が生じるのかを確認し,その要因を明らかにする.
 そのために, 1章でコーパスを用いて先行研究の指摘の妥当性を検証する.2章では,se mettre à Inf.の特性に関する仮説を提唱する.最後に3章で,se mettre à Inf.を用いる際の表現効果がどのようにして生じるのかを述べる.
 なお,本発表では分析に,コーパスとして約800冊の小説と新聞や雑誌の記事を用いる.ただし,出典の記載がない例は,インフォーマントの協力で作成した例である.