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日本フランス語学会第282回例会

日時: 2012年11月10日(土) 15:00-18:00
会場: 跡見学園女子大学文京キャンパス 2号館 7階 M2707 教室
(東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅下車 徒歩2分、東京メトロ有楽町線 護国寺駅下車 徒歩8分)
※ 4月~6月例会で使用した教室および当初学会HPでご案内していた教室と異なります。ご注意ください。

(1) 川上 夏林 (京都大学大学院)「部分の与格構文にみる感覚動詞への意味拡張—対格構文との対比を通して—」

(2) 石毛 健嗣 (東京大学大学院)「大小のメタファーに関する日仏会話コーパスの対照比較」

司会: 守田 貴弘 (東京大学)

*跡見学園女子大学へのアクセス (文京キャンパスでの開催となりますので十分ご注意ください。)
http://www.atomi.ac.jp/daigaku/institution/access.html

*学会ホームページ
http://www.sjlf.org/

*日本フランス語学会事務局
〒150-8366 東京都渋谷区渋谷4-4-25
青山学院大学フランス文学科合同研究室内
belf-bureau@cl.aoyama.ac.jp



[1] 川上 夏林 (京都大学大学院)「部分の与格構文にみる感覚動詞への意味拡張—対格構文との対比を通して—」

ある作用が身体全体と部分に及ぶことを表す部分の与格構文について,先行研究の主な争点は構文の成立を左右する動詞の意味分析にあった.他動詞を基本とするとき,(1), (2)から,動詞の表す身体全体への影響の大きさが部分の与格構文の容認度を左右するように思われる.しかし,状態変化動詞blesserが表す身体全体への影響は大きいはずであるが,(3a)が示すように部分の与格構文を容認しない.つまり,動詞の表す影響の大きさは構文が成立するための十分条件ではないことを意味する.また,(3a)に反して,(4)が示すように,blesserが部分の与格構文を容認する事例も存在する.まとめると,動詞の意味を中心にした分析ではこれらの現象を十分に説明することができない.
(1) Paul lui a cassé le bras.
(2) Paul lui aime bien les yeux.
(3) a.*Il lui a blessé le pied. / b. Il l’a blessé au pied.
(4) La lumière de la lampe de poche lui blessait les yeux.

以上の問題を切り口に,部分の与格構文と対格構文(3b)の対比によって,構文と動詞の相関関係を明らかにし,構文にみる動詞の意味拡張へ考察を広げる.次の順に考察を行う.
1. 認知的観点から,部分の与格構文と対格構文の事態認知を考察し,語彙概念構造によって各構文の意味を検討し,動詞の意味と構文選択がどのように関わるのかを示す.ここで(1),(3)が対照的な結果となる原因が明らかになる.
2. 他動性の低下に伴う動詞の事態認知の転換をもとに,(3b),(4)の構文交替について考察する.そして,(4),以下(5)が感覚を表すことに注目し,部分の与格構文に現れる動詞が感覚動詞へと意味拡張を起こすことを構文の性質から示す.
(5) La lumière lui brûlait les yeux.
3. 対格構文に現れる動詞は,(6),(7)にみるように,心理動詞へと意味拡張を起こし,これが多義性に関わる現象であることを示し,2.で検討する部分の与格構文にみられる感覚動詞とは意味変化の過程が異なることを示す.
(6) Ses paroles ont blessé Marie.
(7) La nouvelle de Marie m’a saisi.



[2] 石毛 健嗣 (東京大学大学院)「大小のメタファーに関する日仏会話コーパスの対照比較」

従来のメタファー研究は、メタファーがわれわれの概念的知識の中でどのような体系を成し、どのような構造を与えているかという側面に注目することが主流であった。このような静的な知識としてのメタファー研究に対して、本発表では、メタファーのより動的な側面に焦点を当てている。あるメタファーを知っているということと、そのメタファーを用いるということは異なる次元にある。すなわち、言語の中にあるメタファーが存在しているとしても、言語を用いる中でそこにどれだけの重みが与えられているのかについては、全く別の問題として明らかにする必要があるのである。したがって、本研究の目的は、実際の言語使用においてメタファーが果たしている相対的役割を考察することにある。今回の発表では、世界中の言語で観察される主要なメタファーの一つである大小のメタファー(e.g. grand homme/大人物、une petite heure/小一時間など)を取り上げ、日本語とフランス語の会話コーパスの中で大小のメタファーがどのように用いられているのかを、形態・統語的側面や使用頻度・用法の対比を中心に分析していく。そして、異なる言語間で共有されているメタファーであっても、その用いられ方には大きな違いがあることを見ていく。